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東北大学病院

小児外科 副科長・准教授 和田 基 先生

東北大学病院小児外科は、東北地方を中心に小児・成人のSBS患者さんが治療に訪れる。現在、当小児外科では、十数人のSBS患者さんの治療や、小腸移植、その後のケアを実施している。小児患者さんの成長後の継続的治療のほか、他科や他施設からの紹介患者さんに対しては、紹介元などと連携を取りながら対応している。
SBS治療のポイントは栄養管理である。栄養管理を含めたSBS治療について、和田基先生にお話しを伺った。

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SBS治療を行う上でのポイントを教えてください

SBS治療のポイントは、まず栄養管理です。患者さんによって残存腸管の長さや切除部位が異なるため、栄養療法は患者さんに応じた対応が必要です。私たちは、さまざまな種類の栄養製剤を用いて患者さんに適した栄養補給を行っています。また、腸管の長さ、状態だけではなく、発症時期や年齢、大腸の状態によっても栄養吸収は異なることがあるので多角的な考慮も必要です。
栄養療法実施に際しては、残存腸管を有効に使うことを考えた治療を行うことがポイントとなります。それらを考慮することで、中心静脈栄養(Total Parenteral Nutrition: TPN)による合併症の軽減やQOLの向上につながります。残存腸管の機能を最大活用するためには、閉鎖可能な人工肛門や腸瘻の閉鎖手術を適切な時期に行ったほうがよいと考えています。また、腸管切除によって腸内細菌叢のバランスも変化するため、この点も考慮した治療戦略を立てていく必要があります。
長期にわたるTPNを実施する患者さんについては、肝機能障害に気をつけなければなりません。SBS治療に伴う肝機能障害は、肝機能に関する血液検査値を観察しているだけでは不十分なことがあります。血液検査上は目立った肝障害を来たしていない患者さんでも、潜在的に肝線維化を伴う肝障害が進行し、肝硬変に至る場合もあるため注意が必要です。胆汁うっ滞の発現にも気をつけなければなりません。SBS患者さんの肝機能障害は、腸管不全にともなう腸管細菌叢の異常や腸管の内分泌、代謝機能なども深く関与しています。従来は、静脈栄養合併肝障害(Parenteral Nutrition Associated Liver Disease: PNALD)あるいは静脈栄養合併胆汁うっ滞(Parenteral Nutrition Associated Cholestasis: PNAC)などと呼ばれていましたが、単純にTPNのみに気をつければよいわけではないので、最近では、腸管不全合併肝障害(Intestinal Failure Associated Liver Disease: IFALD)と呼んでいます。

SBS治療を行う上で、日頃どのようなことに気をつけていますか

患者さんの腸管切除部位によって吸収できる微量元素は異なるので、患者さんの腸管の状態に合わせた栄養療法を行うように気をつけています。微量元素の補給に関し、最近では鉄過剰症が話題となっています。鉄は腸管からも排泄されるため、短腸症候群の患者さんでは鉄分の補給によって、鉄過剰状態につながる場合も出てきます。特に、男性患者さんの場合、月経がある成人女性と異なり鉄過剰状態に至るリスクが高いため注意が必要です。鉄過剰は肝臓への負担も大きく、長期にわたるTPN実施患者さんでは特に注意が必要です。
そのほか、TPNを実施する患者さんのカテーテル感染にも注意を払っています。TPNの主なアクセスポイントは6ヵ所ありますが、感染症を起こした場合は部位を変更しなくてはなりません。また、下肢の静脈は使用しないほうがよいと考えています。その理由は、下肢は血流が相対的に少ないため、他の部位に比べるとカテーテル留置により血管が詰まりやすいからです。また、下半身のほうが感染しやすいことも理由として挙げられます。そのため、下肢部の静脈を使用する際は、短期的あるいは緊急避難的な使用に限定するようにしています。また、カテーテル感染については、予防対策をしっかりと実践することが大切です。日ごろから感染の可能性を念頭に置き、注意を払った対応を行うだけでも大きな成果が現れることも多いと思います。

成人患者さんと小児患者さんでSBS治療の留意点に相違はありますか

成人と小児ではSBSの原疾患が異なるので、残存腸管の機能や動き方に違いがある場合があります。特に、小児は成長過程にあるため、栄養療法の実施においては成長のためのカロリー摂取なども考慮しなければなりません。栄養療法で、セット製剤のみの使用では患者さんにアジャストした栄養補給ができないことも多いため、微量元素やビタミン量などに注意しています。特に、乳児期や第二次性徴期など、身長や体重が増加する時期には、さまざまな栄養素が必要となるため考慮が必要です。
また、小児は肝機能障害を起こしやすいためTPN実施においては注意が必要です。1~2歳の赤ちゃん(乳児)では細胆管での胆汁輸送機構の未熟性や腸管の不使用に伴う粘膜、絨毛の萎縮、バリア機能の低下、腸内細菌叢の異常や敗血症を原因とした胆汁うっ滞を伴う肝障害を起こしやすく、生命に影響を及ぼすこともあります。
腸管機能も成長の可能性のある小児においては、かなりの部分の腸管を失ってもアダプテーション(順応)が期待できる点も、成人との大きな相違点です。

他施設・他科との連携のポイントを教えてください

他施設への転院の場合、患者さんの治療方針をお伝えし、転院先で栄養療法に用いる輸液の処方や検査を行っています。他施設・他科と連携を取る場合も、治療方針を共有し、定期的な情報交換を行いながら治療を行っています。やはり、コミュニケーションが最も重要なポイントだと思います。
私たちの施設には、さまざまな原疾患の成人および小児SBS患者さんがおり、診療科を超えた連携を行っています。中でも、栄養士との連携は密に行っています。現在、SBS治療以外の分野においても、栄養サポートチーム(Nutrition Support Team: NST)は注目されており、さまざまな病態の患者さんの栄養管理に介入しており、必ずしもSBSや腸管不全の管理に特化しているではありません。SBS治療において栄養管理は非常に重要です。SBS患者さんの栄養管理については、NSTでも興味を持って対応いただいています。
定期的に症例カンファランスを行い、症例情報の共有や、問題点に対し各エキスパートが異なるアプローチで治療への取り組みを行うことが理想ですが、現在は、必要に応じてカンファランスを行い、それぞれの専門的な観点からディスカッションを行っています。また、SBS治療は患者さんの病態によって対応はさまざまなため、情報や経験は重要です。そこで、NSTの若手栄養士などを対象とした講義なども実施しています。

今後のSBS治療について

SBSに対するTPNの管理は、ここ数年で非常に進歩しました。以前に比べると、肝機能障害などの合併症をコントロールできるようになってきました。
しかしながら、長期間にわたるTPNによる治療は、患者さんの日常生活に大きな影響を与えます。TPNの減量や合併症の低減を目指すことは、患者さんのQOL向上の観点から非常に重要です。今後は、腸管順応を促進する新たな治療法の開発や、小腸移植治療技術の向上により、さらなるTPNの減量や離脱ができるようになり、より多くの患者さんのQOL向上につながればと期待しています。

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