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SBS コミュニティ 多職種連携

東北大学病院

東北大学病院では腸管不全治療をチームで取り組むための、腸管リハビリテーションセンター設立の構想が立ち上がっている。
現在は、栄養サポートチーム(NST)との連携を軸に、腸管不全の患者さんを多角的にサポートしていくためにはどのようにすればよいか、日々の診療の中でセンターのあるべき姿を模索している。
今回はチームの中心となって活躍されている小児外科の和田先生を中心に、腸管不全の治療に積極的にかかわっているチームのメンバーから、現在の連携体制と取り組み、チーム医療を行うことによるメリット、センター設立へ向けた今後の展望についてお話を伺った。

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(左より順に)
小児外科 副科長・准教授 和田 基 先生
総合外科 下部消化管グループ 助教 渡辺 和宏 先生
小児外科 助教 工藤 博典 先生
小児外科 助教 中村 恵美 先生
栄養管理室 副室長 稲村 なお子さん
地域医療連携センター 医療ソーシャルワーカー 主任社会福祉士 大竹 茜さん
臓器移植医療部 レシピエント移植コーディネーター(小腸・腎臓・膵臓・膵島移植担当) 佐藤 則子さん

腸管リハビリテーションセンターの構想と現在の取り組みについて教えてください

和田 基 先生

和田:短腸症候群をはじめとする、腸管不全の患者さんでは、点滴による栄養補給が必要となりますが、点滴に頼るだけではなく、本人の腸管をうまく使って栄養補給を行い、さまざまな合併症を予防し、安全に治療を行えるようにする腸管リハビリテーションが重要です。また栄養管理だけでなく精神的、社会的な支援も重要だと考えています。学会などでも、腸管リハビリテーションを多職種で連携をとりながらチームとして診療に取り組むことによって、治療成績やQOLの向上が期待できることが報告されています。東北大学でも10年くらい前から腸管リハビリテーションセンターの設立を考えており、実際にセンターを設立するために院内に呼びかけてワーキンググループを作り、少しずつですが活動を行ってきています。
東北大学では栄養サポートチーム(NST)が2003年に立ち上がり、職種、診療科の枠を超えた連携が長年、行われてきました。その一方で、我々小児外科では、腸管不全や小腸移植の治療に積極的に取り組んできました。このように、NSTと腸管不全治療、腸管移植は独自の路線を歩んできましたが、NSTと腸管不全の治療は大きく重なる部分があり、さらに、腸管不全と小腸移植も連続性をもった治療と考えていることから、これらの領域は切り離して考えることができません。
そのため、腸管リハビリテーションセンターの構想を考える中で、NSTとは別に組織を立ち上げるのではなく、我々がまずNSTの中へ入っていき、腸管リハビリテーションのチーム医療につなげてみようと思い、実践することとなりました。

東北大学病院ではどのような形でNSTを運営されていますか

稲村 なお子さん

和田:点滴による栄養補給は、中心静脈栄養法が主に適用されますが、この治療法は1968年頃に米国の外科医Stanley J. Dudrickによって開発されました。東北大学では、葛西森夫先生が日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)の前身となる完全静脈栄養研究会(第1回1970年12月開催)を立ち上げ、国内でもかなり早期から中心静脈栄養の実施に取り組んできたという背景があり、腸管不全など、栄養療法が必要な患者さんに対するアプローチを先駆け的に行ってきました。

稲村:NSTには小児外科、総合外科、消化器内科、耳鼻科、糖尿病代謝科などの医師と、管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、医事課職員など、様々な職種のメンバーが参加しています。NSTでは様々な背景を持った患者さんをサポートしているため、分野が広範囲に及びます。

工藤:カンファレンスは毎週1回、全診療科を対象にコンサルトを受けた患者さんについて実施しています。実際にカンファレンスで取り上げられる症例は成人の患者さんも多く、術後急性期の方を含め、様々な症例が取り上げられています。

NSTおよび腸管リハビリテーションチームでは、各職種の方が、具体的にどのようにかかわっているのか教えてください

管理栄養士のかかわり:栄養評価+α

稲村:管理栄養士の関わりとしては身体計測や食事摂取量の定量化、栄養状態に関係する各種血液検査データを基に栄養状態を評価し、栄養療法の提案を行います。入院患者さんであれば食事の調整はもちろん、栄養剤や輸液の調整提案も行います。外来では患者さんに食生活に関する具体的な提案を行いながら、継続的に関わります。患者さんに関わる様々な職種の方と情報交換しながら介入を進めます。介入時には依頼目的を明確にするようにしていますが、ゴールが設定しやすくなり、患者さんのやる気も違ってくると感じています。

渡辺:管理栄養士には栄養評価を半年に一度、定期的にお願いしています。我々も血液検査で微量元素やビタミンの測定などから栄養評価を行っていますが、管理栄養士には、食事指導や患者さんから体重を増やしたいなどの要望があった場合に相談に乗ってもらっています。

ソーシャルワーカーのかかわり:家庭復帰や就学支援などの社会復帰のためのサポート

大竹 茜さん

大竹:私は小児の患者さんを中心にかかわっており、最近では保健医療福祉の関係機関だけではなく、学校や教育委員会などの教育機関とも直接やりとりすることも増えてきました。医療的ケアが必要なお子さんを、地域や学校で受け入れて支援していただくためにどうしたら良いか、調整したり相談したりすることもあります。
患者さんが住んでいる地域によって違いますが、ほとんどのケースで「前例がない」と言われることが多いので、一つ一つ手続きや仕組みのことについてその地域の方から情報収集したり、他の地域で先駆的な事例があればそれを紹介しながらご家族にアドバイスしたりと、その子がよりその子らしく成長できる環境が整えられるようサポートを行っています。

移植コーディネーターのかかわり:患者さんとご家族に近い関係で、医療者と情報共有

佐藤 則子さん

佐藤:私の役割は患者さんを総合的に捉え、必要としている医療を専門性の高い医療者へとコーディネーションすることだと考えています。外来に来た時の患者さんの様子や、今どういう状態なのか、精神的な状態も含めて、先生方や管理栄養士の方などに事前に情報を提供しています。また、診療や栄養指導を受けてきた後に、患者さんの印象や考えなども聞いて、今後のモチベーションにつながるようアドバイスを行っています。
現在は、移植を希望している患者さん、移植を待っている患者さん、そして移植後の患者さんとのかかわりが中心ですが、腸管リハビリテーションセンター設立の際には、患者さんに総合的な医療を受けてもらうために、もっと早期から積極的にかかわっていきたいと思っています。

チーム内ではどのように情報を共有していますか

工藤:最近では電子カルテが非常に使いやすくなっており、NSTで検討したことはもちろんですが、ソーシャルワーカーが介入した内容なども含め、様々な記録が組み込めるようになっています。情報を共有するツールとして、電子カルテのさらなる活用も有用かと思います。

渡辺:成人の患者さんでは、消化器外科と消化器内科で炎症性腸疾患(IBD)の患者さんのデータベースを作り、情報を迅速に共有できる体制をとっています。カルテとは別に、外科的な手術の情報と、内科的な治療の内容について一元化して管理できるようにまとめています。また、IBDの研究会を年に3回開催し、症例の検討を行っています。

和田:情報を共有するために定期的なカンファレンスを開くという方法があります。ただ、当施設のような大学病院では数多くのセンターが存在するため、会議が増えていくことで個人の負担が大きくなってしまうという懸念があります。

工藤:現在も、ある患者さんがいるからといって必ずカンファレンスを開くというわけではなく、我々医師がハブとなって、様々な職種の方と連絡をとりながら対応しています。それでは対応できなかったり、一堂に会して検討した方が良いと思われる場合には、カンファレンスで検討するという形をとっています。

和田:移植コーディネーターのような様々な職種をつなぐ専任の担当を配置する方法もありますが、そのセンターに人員を配置するためには、その必要性を説明できなければ配置してもらえないため、その点はこれからチームによる診療を行っていくうえで考えていかなければならないポイントかと思います。

工藤:今後は、地域でどのように情報を共有していくかということについても検討を始める必要があると思います。個人情報保護の観点から、クラウドによる情報の共有化にはまだハードルがあると感じますが、遠方から通われている患者さんなどには、地元の施設と連絡を取り合ったほうがより良い医療を提供できると思うので、何か新しいシステムなどの導入を検討する必要性を感じています。

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